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医療ルネサンス千葉フォーラム「口から健康になる」

イベント・フォーラム

(1)基調講演…「口ストレッチ」で潤いを

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 「口の健康」をテーマにした、医療ルネサンス千葉フォーラムが11月20日、千葉市の京葉銀行文化プラザで開かれた。日本大学歯学部教授の植田耕一郎さんが「おいしく、楽しく、美しく。長生きは唾液できまる」と題して基調講演を行った。後半は、千葉県歯科医師会理事で栗原歯科医院院長(佐倉市)の栗原正彦さんと読売新聞東京本社の吉田清久医療部長を加えて、口腔こうくうケアの重要性などについて話し合った。

【主催】 読売新聞社

【後援】

千葉県、千葉県歯科医師会

千葉市歯科医師会


日大歯学部教授 植田耕一郎さん

うえだ・こういちろう
 1959年、東京都生まれ。83年に日本大学歯学部を卒業し、90年から東京都リハビリテーション病院医員。2004年4月から現職。今年9月から同大歯学部付属病院副院長。著書に「脳卒中患者の口腔ケア」など。


 歯科と言っても、矯正歯科や歯周病科、口腔外科など20近くの専門診療科があります。その中の一つに私の専門の摂食機能療法科があります。

 全国の歯科大病院で摂食機能療法科があるのは日大だけで、歴史も浅く、なじみの少ない診療科です。

 この道に入るきっかけは、30歳になったばかりの頃、リハビリテーション専門の病院に勤務することになったからです。当時、リハビリというとスポーツ選手のことを思い浮かべましたが、入院患者の7割は脳卒中患者でした。

 病院で初めて患者の口の中を診て驚きました。虫歯、歯槽のう漏はもちろんでしたが、食べ物が残ったままだったのです。その日の昼ご飯が何だったかがわかるような状況でした。

 口にまひがあると、患者は、自分でのみ込んだり吐き出したりすることができず、その状態が続くと虫歯が何本も一度にできてしまいます。

 歯磨きできないから虫歯が増えたと思われるかもしれませんが、(健康な人だと)3か月間、歯を磨かなくても、私の診た患者のように虫歯はできません。通常は、食べたり、話したりすることで虫歯を防ぐ作用が働くからです。

 それまで私は、口の中をきれいにし、歯を治せば何でも食べられるようになると思っていました。しかし、リハビリ病院での経験から、喉や口にまひがある場合、摂食・嚥下えんげリハビリテーション(摂食機能療法)が必要と思うようになりました。

 介護が必要なお年寄りの死因のトップは肺炎です。これは、口から食事をとらず、会話の機会も少ないため、口は雑菌の巣になり、これを吸い込むと、誤嚥ごえん性肺炎につながります。

 しかし、食べ物を口にするだけで雑菌を洗い流せます。これを「命のワンスプーン」と呼んでいます。歯磨きも大切ですが、口は「食べる」「話す」「表情を作る」「呼吸する」のすべてが備わって初めて機能します。

 こうした機能の強化には「口ストレッチ」が有効です。例えば、喉の上下動を担う筋肉は、あおむけになって、頭を上げて、爪先を10秒間見ることで鍛えることができます。

 唾液は健康の目安になります。口の中が唾液で潤っていれば、健康といってもよいぐらいです。口を潤すには、口ストレッチのほかに、心身がリラックス状態にあることと、口への心地よい刺激も大切です。

 私は、「健康とは何か」と聞かれると、「感じること」と答えます。食べておいしいと思える瞬間があることが、「健康で幸せ」ということだと思います。

 車椅子生活でも寝たきり生活になっても、人は幸せにも健康にもなれると思います。健康は数値で表せるものではありません。それぞれの主観次第で、健康に暮らすことができると信じています。

 
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