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はしか、海外からの持ち込みで感染増…ワクチン2回で発症防ぐ
麻疹(はしか)の感染者がじわじわと増えています。海外からの渡航者の持ち込みがきっかけで沖縄、愛知などで報告が相次いでいます。2回の予防接種で発症をほぼ防げるため、国は接種歴を確認し、確実に接種を受けるよう呼びかけています。(佐々木栄)
なぜ起きる?
麻疹ウイルスに感染し、発症します。空気中に浮遊するウイルスや、せきやくしゃみによる飛まつ、直接的な接触で感染します。免疫を持たない人が病原体に触れると、ほぼ100%感染します。1人の感染者から12~14人にうつるとされ、感染力は非常に強いです。
世界で毎年2000万人が発症し、9万人が亡くなっています。国内でも2008年には患者が1万人を超えていました。
国は06年、2回のワクチンを定期接種とし、国内に元々あるウイルスの根絶を目指しました。対策が奏功し、15年、世界保健機関(WHO)は日本を「排除状態」と認定しました。近年は、海外からの持ち込みで患者が出ています。
どんな症状?
感染から10~12日の潜伏期間を経て発症します。
「前駆期」はせき、鼻水、のどの痛み、発熱など、風邪に似た症状が2~4日続きます。口の中にできる白いぶつぶつも特徴的な症状です。この時期の感染力が最も強いです。
「発疹期」になると39度を超える高熱が出て、体の広い範囲に赤い発疹ができます。
合併症で目立つのは肺炎で、頻度は低いものの脳炎になることもあります。重症化すると1000人に1人が亡くなります。
最も重い合併症に「亜急性硬化性全脳炎」があります。感染後、5年以上たって発症し、脳に炎症を起こします。高い確率で死亡しますが、近年の発症例は年間数人です。
治療や予防は?
効果的な治療法はなく、対症療法が中心になります。もし、身近で麻疹患者と接触したことが分かれば、接触から72時間以内に緊急的にワクチンを接種することなどで発症を防げる可能性があります。
麻疹は、マスクや手洗いでは防げません。予防には、2回のワクチン接種が重要です。
1度発症すると免疫は生涯持続するとされ、予防接種と合わせて国民の約9割は免疫を持っているとみられます。ただ、1977~90年生まれには予防接種が1回のみで、十分な免疫を持っていない人が多くいると考えられています。この状況の人が感染すると、「修飾麻疹」という軽めの症状が出ます。典型的な症状とは異なりますが、感染源にはなり得るので注意が必要です。
過去の感染歴や接種歴が母子手帳などで確認できない人は医療機関で検査を受け、結果に応じて1回または2回の接種を検討することが勧められます。
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