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介護福祉士目指す留学生、在留資格見直しで急増
介護の仕事で中核的な役割を担う介護福祉士を養成する学校で、留学生が急増している。改正出入国管理・難民認定法(入管法)の施行に伴って在留資格が見直され、今年9月からは、養成校を卒業して介護福祉士の資格を取れば、日本で働くことが認められるからだ。
■定員80人中60人
「介護サービスには居宅や施設があります。居宅という言葉はわかりますか?」。4月中旬、東京都豊島区の東京福祉保育専門学校では、入学したばかりの外国人生徒約30人に、介護で使う用語を易しく教える授業が行われていた。テキストは、ふりがな付きだ。
同校は1年生(定員80人)のうち、60人がベトナム、ミャンマー、中国などからの留学生。授業は2クラスに分かれ、日本人10人と別に行われている。介護福祉士学科の
ベトナム人女性のグェン・ティ・タイン・タインさん(23)は2年生。日本語学校を経て、2016年4月から同校で学ぶ。「卒業後は日本の介護施設で働きたい。たくさん経験を積んで帰国し、学んだ技術や知識を伝えたい」と話す。
■「留学」から「介護」へ
専門学校や短大などでつくる日本介護福祉士養成施設協会(東京都千代田区)によると、厚生労働相が指定する介護福祉士養成校に入学する留学生は、14年度に17人だったが、15年度に94人、16年度は257人と急増した。国籍はベトナムが114人と最多。次いで、中国53人、ネパール35人と続く。
在留資格が見直されることが背景にある。これまでは、留学生が介護福祉士の資格を得ても、日本人の配偶者になるなどの特別な場合を除き、介護の仕事に就くことができなかった。それが、改正入管法の施行で、介護福祉士の資格を取得した留学生の場合、卒業後に在留資格を「留学」から「介護」に切り替えて日本で働けるようになる。
同協会によると、養成校では16年度、定員に対する入学者の割合が、全国平均で5割を下回るなど、大幅な定員割れが起きている。同協会は、「介護を目指す日本人の若者が減少する中、留学生が増えていくことは、学校経営の面でも大きい」とする。
品川介護福祉専門学校(東京都品川区)では、定員40人に対し、今年度の入学者は27人。内訳は日本人24人、外国人3人だ。荒井俊子事務長は、「定員割れはここ数年続いており、一方で留学生は今後も増えていくだろう」と見通す。その上で、「介護の学習は専門用語も多い。授業についていけるよう、補習などのサポートを充実させたい」と話している。
<在留資格> 政府が、出入国管理・難民認定法に基づいて、外国人の滞在期間と滞在中に可能な活動などを認定する制度。資格は、高度専門職、医療、技能実習、留学、永住者など27種類ある。必要に応じて、資格の変更や期間の更新といった手続きが必要となる。
背景に深刻な担い手不足
高齢化の進展で、介護サービスを利用する人が増える一方、担い手不足は深刻だ。仕事の割に処遇が低いことが背景にある。介護の仕事の毎月の給与は全産業平均よりも約10万円低い。
今回の法改正の狙いについて、厚生労働省は「単純労働の担い手ではなく、高度で専門的な人材を確保するため」と説明する。
養成校では、留学生も日本人と同様、卒業に必要な授業や実習の時間は同じ(1850時間以上)で、給与などの処遇が日本人と同等でなければならないという。
ただ、高度な知識や技術を身に付けた留学生でも、言葉や文化の壁は少なからずあるだろう。貴重な人材が職場に定着できるよう、国は事業者任せにせず、きめ細かな支援を行うことが求められている。
(板垣茂良)
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