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介護に外国人、高まる関心

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技能実習制度改正 担い手確保に期待

介護に外国人、高まる関心

技能実習制度の対象職種に「介護」が加わったことを受けて行われた介護事業者向けのセミナー(3月、都内で)

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 介護現場への外国人の受け入れ拡大に向けた動きが、本格化している。外国人技能実習制度の改正で、対象職種に「介護」が加わるからだ。制度本来の目的は、アジアなどの発展途上国に日本の優れた技術を移転することだが、深刻な人手不足に悩まされている介護業界では、担い手を確保する新たな手段として関心が高まっている。

 「受け入れが可能なのは、設立後3年以上の施設です」「訪問介護の現場で働かせることができません」。3月上旬、東京都内で開かれた外国人技能実習制度に関する介護事業者向けセミナーでは、企業や社会福祉法人などの担当者約30人が真剣に耳を傾けていた。

 主催したのは、中国やベトナムなどで医療介護の人材育成を行うコンサルティング会社「アイメイド」(東京都)。荻野健社長(52)は「ベトナムでは看護師資格を取っても病院に就職できない人が大勢いる」とし、専門性のある人材が日本を目指す可能性があることを指摘する。

 実習生を1人採用するには、研修費や旅費などを含め、3年で約200万円が必要になるという。それでも、浜松市などで認知症グループホームを運営する企業の男性担当者(43)は「職員を募集しても集まらない時代に、外国人は重要な担い手。前向きに検討したい」と話す。

  ■深刻な人材不足

 重労働な割に低賃金というイメージがつきまとう介護業界では、人手不足が深刻だ。将来の介護業界を担う人材を育てる介護福祉士養成校は、定員に対する入学者が全国平均で5割を切っている。厚生労働省の推計では、少子高齢化の影響もあり、2025年に全国で約38万人の介護職員が不足する見込みだ。

 そうした中、従来は建設、食品製造など74職種で実施されてきた技能実習制度が、介護にも拡大される。来年中には、現場に実習生が登場するとみられる。同省は「狙いはあくまで海外への技術の移転。人材不足解消は別の話だ」とする一方で、「不足する人材を外国人で補おうという考えが現場にはある」と認める。

 対人サービスへの制度導入は初めてだ。入浴や食事の介助などを行うには利用者や職員との意思疎通が大切なため、実習生には他の職種にはない日本語能力の条件が設けられた。

 具体的には、来日時に「基本的な日本語を理解することができる」レベルが求められる。2年目は、その一つ上の「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルが求められる。その水準に到達できなければ帰国しなくてはいけない。

 「ハードルが高すぎる」との声もあるが、条件の厳しさには理由がある。

 現場には、実習生の導入でサービスの質が低下することへの懸念もある。介護業界のイメージが悪くなれば、日本人からさらに敬遠されて人材が確保できなくなる恐れがあるからだ。

  ■高い技術伝える

 期待と不安が膨らむ中で、積極的に動き出す介護事業者もある。

 実習生は母国で研修を受けた後、連携する日本の監理団体が実習先の介護事業者にあっせんする。千葉県内の特別養護老人ホームの施設長らで作る一般社団法人「高齢者福祉事業支援協会」は、今年度にも自らが監理団体となり、中国からの実習生を受け入れる考えだ。

 同協会理事の湯川智美さん(58)は、「実習先に介護技術の指導を丸投げするのではなく、監理団体として協力していきたい。そして、日本の高い介護技術を正しく海外に伝える役割を担いたい」と話している。

  〈外国人技能実習制度〉  外国の若者が日本で先端技術を学び、母国の発展に生かしてもらうことを目的に1993年に始まった。受け入れ数は約21万人(2016年6月現在)。ただ、実習先から失踪する外国人も増えており、背景に賃金の不払いや暴行などの人権侵害があるとみられる。国は今年1月、認可法人「外国人技能実習機構」を設置し、実習先の企業などを監視している。

EPAに基づき3か国から

 現在でも、特別養護老人ホームなどの介護施設では、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国から来日した介護福祉士候補者が働いている。経済連携協定(EPA)に基づき、2008年度に始まった取り組みだ。

 原則4年の在留期間中に介護福祉士の国家試験に合格すれば、引き続き日本で働くことができる。今年1月現在で、計2777人が入国し、440人が資格を取得した。4月からは、資格取得者に限り、高齢者の自宅を訪問し、食事や入浴などを手助けする訪問介護を行うことも可能になった。

 また、昨年11月には改正出入国管理・難民認定法が公布され、介護福祉士資格を持つ人を対象にした「介護」の在留資格が創設された。同法施行後には、専門学校などの養成校を卒業し、資格を取得した留学生は、日本で働き続けることができる。

 (板垣茂良)

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1件 のコメント

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人手不足ではなく賃金不足

いまむらひでき

今、介護業界で起こっていることは人手不足なのではなく賃金不足。他業界より重労働で低賃金であれば人手不足になって当たり前。世の中には低賃金で生活に...

今、介護業界で起こっていることは人手不足なのではなく賃金不足。他業界より重労働で低賃金であれば人手不足になって当たり前。世の中には低賃金で生活に困っている人がたくさんいる。他産業の仕事より高い賃金にすれば人はいくらでも集まるのに、低賃金の外国人を入れれば日本人介護士の賃金はいつまで経っても上がらない。賃金が上がらなければいつまで経っても人手不足は解消されない。最後にここのブログにも書かれているけど、外国人介護士が増えてくると、介護は外国人の仕事だというイメージが付いて、日本人介護士は益々辞めていくことになると思いますよ。そうして介護業界はどんどん疲弊していく・・・。

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