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泌尿器科医・小堀善友の新オトコのコト

妊娠・育児・性の悩み

射精は体にいい?

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射精は体にいい?

 私は射精の専門家なのですが、「射精すると体にいいのか?」ということをよく聞かれます。実際、「セックスは体にいい」という報告はたくさんあります。心臓にも、ホルモンにも、精神的にも、セックスを多くしている人の方が健康的であるとの報告はたくさんあるのです。

 でも、それはセックスという行為があってのことであり、射精自体が体にいいかどうかなんて、わかっていないのです。例えば、マスターベーションは体にいいのでしょうか?

男性ホルモンの増加

 「マスターベーションをしすぎると、ハゲる」とか、「頭が悪くなる」なんて都市伝説がありますが、それは全くのでたらめで、健康にどんな影響を与えるかなんて調べた研究は今までほとんどありませんでした。

 ここで、一つ興味深い研究があります。

 先日の日本性機能学会で、マスターベーションをしている時のホルモンの変化に関する研究がありました。射精をする前後で、どれだけホルモンが変化しているか、ということを調べた研究です。

 今まで、「射精をすると、その時は男性ホルモンが下がるのではないか」という説もありました。しかし、それを証明した研究はありません。

 今回報告された研究では、「勃起する前」「勃起した後」「射精の直前」「射精している瞬間」「射精した後5分後」で、男性ホルモンであるテストステロンと、下垂体ホルモンのプロラクチン、副腎皮質ホルモンでストレスホルモンとして知られるコルチゾールを調べるという研究でした。

 この研究では、びっくりしたことに、射精をする前に徐々に男性ホルモンであるテストステロンが上昇し、射精時をピークにして下降するということがわかったのです。(図を参照ください。pre=勃起する前、election=勃起した後、climax=射精する直前、ejaculation=射精している瞬間、after=射精後5分という意味です。)

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 この図を見ると、勃起する前から、射精直前までぐんぐん男性ホルモンであるテストステロンが上昇し、射精する時をピークにして、その後は下降してくるということが示されたのです。ちなみに、乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンと、副腎ホルモンであるコルチゾールは、勃起から射精前後を通じて、上昇することもわかりました。

 この研究では、射精をする前後で、ダイナミックに男性ホルモンが変化するということが示されたのです。つまり、射精をすることで、男性ホルモンが増加するということがわかります。

健康のために

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 男性ホルモンは、性機能だけではなく、脳、血液、骨、血管、筋肉、脂質代謝に働くことがわかっています。働きは様々ですが、男性ホルモンが多い方が健康に良いことがわかっています。

 今回の調査では、マスターベーションの射精時で、一時的に男性ホルモンが増加することが示されました。男性ホルモンが体にいいということを考えると、「射精自体が体にいい」可能性があることをこの研究が示したことになります。ただし、なぜ射精でそれほどホルモンに変化が起こるのかはまだわかっていません。

 ちなみに、プロラクチンは射精前後で継続的に上昇するのですが、それが射精直後の「不応期」(いわゆる「賢者タイム」)に関係していると言われています。射精後にプロラクチンが上昇しない人がいるのですが、その人は射精の連射が可能なのです。

 この実験でも、プロラクチンが上昇しない人は射精の連射が可能だったとのことです。(これを証明した論文もあります)

 ちなみに、手前 味噌(みそ) なのですが、この研究は私の後輩の研究であり、私の在籍している施設で行われ、解析したものでした。とても面白い結果だったので、こちらに引用しました。私も、被験者として射精前後でホルモン採血された一人です。

 ということで、皆さんも健康のために頑張りましょう!

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小堀善友(こぼり・よしとも)

泌尿器科医 埼玉県生まれ

2001年金沢大学医学部卒、09年より獨協医科大学越谷病院泌尿器科勤務。14年9月から16年3月まで米国イリノイ大学シカゴ校に招請研究員として留学。専門分野は男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症。ホームページは「Dr.小堀の男の妊活ガイド」。略歴の詳細はこちら

主な著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)。

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4件 のコメント

いつまでも男

四朗

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高校時代の友人3人と写生会に行った。紅葉真っ盛りのS公園、おもいおもいに作品を作り、お楽しみは打ち上げ会。
酒の飲めない私は、友人たちの豪快な飲みっぷりに押されっぱなし。
飲めば話は体調、2人は寡夫になったが、思い出したようにマスターベーションするという。
夫婦で暮らす私より回数は多いようだ。それが体によいことの証明になるかも知れぬ。
そんな話もできる友人との会話は、やはり体によいようだ。

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納得

アラフィフ

夫婦生活がすっかり減った30代後半から、月1、2回のペースで何となく再開したマスターベーションが、今や週4、5回のペース。50歳が近いのに、あの...

夫婦生活がすっかり減った30代後半から、月1、2回のペースで何となく再開したマスターベーションが、今や週4、5回のペース。50歳が近いのに、あの頃より射精時の勢いがあり、性欲が強くなっている自分に驚いていました。相変わらず本番に生かす機会が少ないのは残念ですが。この研究結果には納得です。

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対象になる年齢は?

めざめたじいさん

人権侵害が心配な研究実験。オトコのトコさんが心配したのも頷けます。 射精が体にいいとは、生殖年代を過ぎたものには「そう言われても・・・」なんです...

人権侵害が心配な研究実験。オトコのトコさんが心配したのも頷けます。
射精が体にいいとは、生殖年代を過ぎたものには「そう言われても・・・」なんです。
月数度の射精で、健康が保てるのだったら、欣喜雀躍励みます!

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